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戸松有葉の ショートショート1001作を目指す旅

ショートショートとAmazon電子書籍販売・配布の活動をしています。

950 魔法少女

ノーマル(シリーズ外)

 

「あなたたちももう中学三年生なのだから、くだらないことばかり話していないで、自分の進路を考えなさい」
 女性教師が、中学生の集まりを一喝し、散らせる。
 生徒たちは不満だ。別に授業中だったわけでもなく、教室内で少人数が集まって話すくらい迷惑にならない。
「去年まであんな口うるさかったっけ?」
「歳取ると説教臭くなるんじゃないの?」
「説教じゃないだろ、とうとう三十路も超えてまだ独身だから、俺らに八つ当たりしてるんだよ」
 なお、全部女性教師に聞こえている。
 歯を食いしばり、こめかみをピクピクとさせながら、堪える彼女。決して八つ当たりなどしていない、あと、婚期逃したとは思っていない。
 しかし他の教師には八つ当たりしたくなった。
「みなさんも注意してくださいよ! 教師が甘いから生徒もくだらないことに夢中になるんです!」
 彼女の態度とは真逆に、他の教師たちは軽いものだ。
「えー、いいじゃないですか、あれくらい。僕らだって中学生の頃は……」
「そんなことは理由になりません! 棚上げでいいから注意しないと教育になりません!」
「まあまあ、先生も落ち着いて。うん、私はわかりますよ、テレビに影響されるのはよくない」
「インターネットです! 全然知らないじゃないですか」
 生徒たちが夢中で話題にしているのは、インターネットで騒がれている、あることだった。
 魔法少女が、人助けや悪と戦ったりしている……というもの。
 ネット発で広まり、全国の中学校でも話題になっている。しかもこの近辺は、魔法少女とやらが目撃されたことのある場所に近く、さらに生徒たちの好奇心に火を点けていた。
 加熱する生徒たちと、相対する教師たちの無関心。女性教師は孤軍奮闘するしかなかった。
 そんな日々の続く、ある授業のこと。
 女性教師は普段、接する姿勢も教え方も評判は良く、生徒も授業を大人しく受けている。あの「行き遅れ八つ当たり」発言した生徒も含めて。
 授業時間きっかりに終えさせられなかったため、急ぎ足でチョークを走らせていると、スマホの着信音らしきものが聞こえてきた。ケータイ所持自体は校則違反ではないが、授業中は切っておかねばならない。時間としては休み時間とはいえ、違反だ。ただ、このうっかりはよくあることであり、今は急いでいる。女性教師もいちいち相手にしていられず、後で注意を一言しておこうと思っていた。
 ……のだが、
「え、嘘っ、魔法少女見たら幸運訪れるの?」
 女子のその言葉で、額を黒板に勢いよくぶつけてしまった。
「あ、すみません」
 つい声を出してしまった女子生徒は気まずそうに謝る。
 スマホ見ていたことや声出したことよりも、女性教師はショックを受けていたのだが、それは告げずに、物凄い形相で振り返り、女子を睨んだ。
「ひぃ」
 授業は途中だったが、何も言わずに終えて、教室を出て行く。キレた、と生徒たちは思っただろう。
 女性教師は急いでトイレ個室に駆け込むと、自分のスマホで調べてみた。
 なるほど、どうやら噂は発展しているようだ。大変悪い方向に。
 魔法少女が存在するという話では済まず、魔法少女を直接見ると幸運が訪れるという話になっている。ついでに、見るよりも面と向かって会えるほうがよく、話せるとさらに幸運が訪れるらしい。
「っとに!」
 思わず声に出して、不満を露にする。
 正体がバレる危険が増したではないか。
 元々は、正体など、ある程度時間が過ぎたら明かしてもよかった。だがそうはいかなくなった。
 魔法は使えるが、魔法少女に変身してから魔法を使うわけでもなければ、少女姿に変身する魔法が使えるわけでもない。認識阻害魔法で誤魔化していたら、勝手に魔法少女だと思われただけなのだ。
 今更、三十路過ぎた女性教師が「魔法少女」でした、などとバレるわけにはいかない。一連のことはすべて都市伝説として済まさねばならない。
 世のため人のため、そして自分のため、孤軍奮闘は続くようだ。

(了)

魔法少女育成計画 オフィシャルファンブック

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