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戸松有葉の ショートショート1001作を目指す旅

ショートショートとAmazon電子書籍販売・配布の活動をしています。

966 休日なにしていますか? 忙しいですか? 救いないですか?

『あなたは休日に何をしていますか?』

 私はこんなアンケートを実施してみた。
 とてもありきたりな質問だ。
 では、有意義な回答や面白い回答、問題が浮き彫りになる回答が得られないかと言えば、それは違うと思う。だからこそ私は実施したのだ。
 そうは言っても、もちろん普通な回答が主だ。趣味に費やす、友人恋人家族と出かける、など。
 しかし、やはりと言うべきか、珍回答も得られた。それも、先の普通な回答と同等数かそれ以上の数を誇っている。数が多いのだからこれもまた普通な回答と定義すべきかもしれない。

『あなたは休日に何をしていますか?』
『仕事』

 どの回答者も、極自然にそう回答した。決してボケで返してきたわけではない。
 休日出勤、家に仕事を持ち込んでいる、自営業・フリーランス(自由業)で常に仕事状態、副業をしている……人によって様々ではあるが、確かに仕事をしているようだった。
 これが珍回答だとわからない人は――少なくとも回答者らはわかっていない――、感覚が麻痺している。
 質問は何だったか。
 休日に何をしているか、だ。
 仕事していたら、その時点ですでに休日ではない。つまり回答になっていない。『休日に』との質問が脳内で勝手に『日曜祝日に』と変換されてしまっている。同時に、『休日』との言葉は脳が自然に受け付けていない。
 無理もない。
 このアンケートは日本人に対して行なったものだ。日本人は、サービス残業や非効率的な仕事の押し付け、公私の区別ない職場や上司に慣れ過ぎて、「休日」をもはや理解できないほど病んでいる。
 宗教・慣習面でも「休日」を理解しにくい環境だった。元々明治前までは、日本には基本「休日」がなかった。
 毎日休まず仕事していたという意味ではない。休みたければ休んでいたし、そうでなければ休んでいなかった。天候の都合もあれば本人の気分もある、別の用があれば仕事などできない。ある種最も合理的な休日を設けていたわけだ。(これは近代化前だからできることで、近代化後でも合理的だという話ではない。)
 日本は近代化で欧米を真似たし、戦争で負けもしたが、植民地支配された歴史はない。主権を失った期間も短い。周期的に休日があるというキリスト教の影響は、社会に組み込まれてはいるものの、その感性まで定着したかは相当怪しい。そこに加えて、労働環境が悪くとも改善できない、文句も言えない体質が相まって、現状のような事態になったのではないだろうか。
 有給休暇など取れないのが当たり前、取っても有給休暇中に仕事する、無給休暇も仕事をする日……。
 貧乏暇なしとはよく言ったもので――元来の意味はこの際どうでもいい――、皆忙しい。ついでに貧しくなくとも、元が金持ちの家でもない限り、それはそれで忙しいことを表す。
 ところで、こうして他人・社会を分析している私自身は、『休日何をしているか』、答えておこうと思う。
 もし仕事が残っていても、遊びに誘われても、したい趣味があっても、「忙しいから」との理由で拒絶する。
 事実忙しいではないか。
 休日は、休むのに忙しい。

(了)