戸松有葉の ショートショート1001作を目指す旅

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979 猫の特性を宿す能力ッ!

 日常が壊れたあの日から、少年は学校からの帰宅さえすんなりさせてもらえない。
 今も人気のない路上で、敵の刺客が道を塞いでいた。
 刺客の見た目は、背の低い中年だ。少年からすれば、普通に喧嘩すれば勝てそうである。しかし敵も少年と同様能力者、体格など何のあてにもならない。
「くくく、お前、なかなかの能力を手にしたそうじゃないか。だが上には上がいるってことを教えてやるよ」
 警戒を強める少年にやってきたのは……言葉だった。
「俺は、猫の特性を宿すことができる!」
 刺客は自分の能力を教えてきた。「教えてやる」と言っていたが、行動で思い知らせるという意味ではないらしい。
 自身の能力は隠しておいたほうが有利なのに、わざわざ教えてくれる敵も多い。一般的と言ってもいいほどだ。何故なのか疑問ではあるものの、少年も能力者の端くれ、その辺りを突っ込むのは野暮だとわかってもいる。
 さて、刺客の能力だが、猫の特性を宿すという。聞く限り、脅威ではない。
「猫の特性なんて宿してどうするんだ」
「くくく、やっぱり誤解しているな。猫と一言に言っても色々いるだろう? 俺は、ネコ科の動物なら、どんな動物の特性でも扱えるんだよ!」
「っ!」
 それは確かに脅威だと、少年も認める。ライオンやチーターの特性を、人間の知性を持ちながら扱えるのなら、強そうだ。
 いったいどんな攻撃が来るのか、何の特性を宿すというのか、少年は身構える。
「まずは、サーバルキャットだ!」
 某アニメのおかげで一躍人気動物の仲間入りを果たした、ネコ科のサーバルキャット。その特徴といえば、ジャンプ力だ。
 刺客は音もなく、いつの間にか電柱の上へと登っていた。速度としては異常に速かったわけではない。しかしそのしなやかな動きで、移動を感じさせなかったのだ。人間でもそこらの猫でも同じことはできない。
 刺客は電柱の上から、不敵な笑みで少年を捉えながら、ジャンプ力を活かして一気に飛び込んだ!
 躱された。
 腕と胸上部を地面にぶつける。それはもう激しく。
「を、ぐ、おぁあ」
 痛みでのたうち回っている。
 隙だらけだ。
 しかし少年は蹴りで追撃するのもどうかと思い、やめておいた。画的によろしくない。特に今はサーバルキャット状態だ。虐待に見えるのはマズイ。
 だから話すだけにしておいた。
「ジャンプ力凄いのはわかるが、それって若干草が生えていて視界悪い場所だから有効な奇襲だろ。あんなに丸見えな位置から真っ直ぐ跳ばれても」
「ぐ、おのれ、組織が一目置くだけはあるな!」
「今の完全に自滅じゃ……」
 刺客は少年の言葉を無視し、体勢を立て直すと、次なる猫の特性を発動した。
「聞いて驚け! 今度は、三毛猫だ!」
「……え? あ、うん、逆に驚きはしたが」
 弱くなっている。
「ばっ、お前わかってないだろ。ただの三毛猫じゃないんだよ、オスの――」
「はいはい、わかった。希少なんだよな。でもだからって強くはないだろ」
「だが驚くぞ! どれほどの低確率かを知れば!」
「別にいい。ググる気も起きない。というか驚いても、人間より弱くなっていることに変わりない」
ぐぬぬ
 刺客は悔しそうに歯を噛み締めたが、少年の言葉からヒントを得ることができた。そう、人間のほうが強い……。
「ならばこれはどうだ、猫ひ◯し――」
「アウト! しかも猫◯ろしの特性得ても強くはならない、マラソン得意になってどうする」
「じゃあ猫背に」
「弱そうだ!」
「注意せざるを得なくなって、隙が生じるぞ」
「いちいち注意なんかしない。俺はあんたの母ちゃんか」
 なんかもう面倒になってきたので、そろそろ少年も本気出して葬り去ることにした。
 が、その前に告げておきたいこともある。
 最初思ったように、ライオンやチーターの特性で攻められたら、苦戦していたかもしれない。能力自体は脅威だったのだ。
「あんたに猫の特性宿す能力って、ほんと、猫に小判だな」

(了)

 

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