戸松有葉の ショートショート1001作を目指す旅

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983 黒板が消えた日

 その日、世界中から黒板が消失した。
 初めは、ひとつの教室で悪質な悪戯、窃盗・器物破損事件が起こったと捉えられたのだが、黒板は全教室から失われており、更には他校でも失われており、学校に限らず黒板のあった場所では同じ現象が起きていて、しかも世界規模ということまで発覚するに至り、世界中がパニックに陥った。
 怪奇現象・心霊現象の類、あるいは神の裁き、そうとしか思えないほどありえない黒板一斉消失事件。
 しかし一方で、人間によるテロリズムに過ぎないとの冷静な見方もあった。原理・手段こそ不明だが、それはまだ判明していないだけであり、あくまでも犯人は人間だとの見方だ。
 黒板利用に反対との意見は、以前からあった。
 黒板には欠点が様々にある。
 第一に、チョークを使うため、粉を吸い込んだ教師や子供が肺炎になるとの懸念。このあたりは、昔はまだしも今のチョークメーカーなら配慮しているのだが、今重要なのは反対派それも過激派の認識であるため、実害の有無は関係ない。
 第二に、やはりチョークを使うため、衛生上悪い。汚い。持つ手はもちろん、黒板の下はチョークの粉でいっぱいだ。いちいち洗うのも掃除するのも大変である。
 第三に、これは第一の問題に近いが避けられていない問題。喉を痛める、特に黒板を使い続ける教師は大変だ。
 第四に、筆圧によっては文字が消えてくれない。消す作業は繰り返しになるので、かなりの時間・労力を要している。
 では黒板反対派が正しく、ホワイトボードにすればいいのかといえば、そう単純ではない。総入れ替えとなれば費用は莫大になる。またホワイトボード自体にも欠点はあって、光って見えにくかったり、インクの消費が激しかったりする。
 電子黒板なら欠点は減り、学習意欲も高まるかもしれないが、それこそ予算が足りない。
 結局、黒板は多く残らざるを得ないのである。
 黒板反対過激派のテロは、現実性を欠いた暴挙だという見解が、徐々に世界へ広まっていった。
 そんな最中、ついに犯人が逮捕された。やはり怪奇現象の類ではなく、人間の作為だったのだ。
 しかしながら、動機に関しては、大方の予想は外れていて――。
「黒板反対派? いいや、わしは自分の研究室でも黒板使っておったぞ。まあ欠点はあるかもしれんが、許容範囲ではないかの。そんなことより、わしは小さな頃から不満だったのだ。『黒板消し』あるじゃろ。あれはおかしい。消しているのは、黒板に書かれたチョークによる文字や図ではないか。全然『黒板消し』ではない。だからわしは、長年かけて本当の『黒板消し』を発明してやったのだ」

(了)

 

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