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戸松有葉の ショートショート1001作を目指す旅

ショートショートとAmazon電子書籍販売・配布の活動をしています。

958 玄武だった

目の前の圧倒的な存在に、言葉どころか、声すら出せなかった。 浦島太郎は思い知る。食物連鎖の頂点に立つ人間、しかしその実、道具と集団を失えば非力な動物であり、捕食される対象に過ぎないという現実を……。 玄武は別に人間食べないが。 「助けてくれてあ…

957 浦島太郎は語りたい

その海辺の小さな村に、他所者が訪れるのは珍しいことだった。あったとしても、海産物と取引するための商人くらいであり、それら商人も見知った者ばかりだ。 だから見知らぬ人、それも老人が訪れたことは、村人たちにとってちょっとしたニュースだった。 老…

956 恋が与えるのは(140文字小説)

(ああ、王子様!) 亀は、海辺で暴漢から助けてくれた浦島太郎に惚れ、恩返しに竜宮城へと案内した。 浦島は幸福に過ごし、亀も満足だったのだが、浦島と乙姫の様子で、ふと悟る。(これ、寝取られじゃん!) 浦島に帰る気はなかったのだが、亀は玉手箱を持…

自覚的な裸の王様(200文字)

王は美しい服を求めて、何度も作り直しを命じていたのだが、どうしても気に入るものが出来上がらなかった。「服では美しい私を際立たせることは不可能なのだ」 そう結論した王は、自らの肉体を美しくすることに努めた。徹底的に虐め抜き、鍛え上げる。完璧な…

鏡が頑なな理由

妃は鏡に問う。「鏡よ鏡、この世で最も美しいのは誰?」『それはお妃様です』 その答えに妃は満足……したりはせず、静かに席を立つと、ある物を持って戻ってきた。「違うでしょ!」 言いながら、紙製のハリセンで軽く叩いた。鏡なので割るわけにはいかない。…